加福漆器店について
加福漆器店は、福井県小浜市で若狭塗をつくり続けて、もう100年ほどになります。
創業当時の正式な記録は残っていませんが、祖父の代、曾祖父の代からずっと、若狭塗ひとすじに歩んできました。
若狭塗は、卵の殻や貝殻、松葉などを使って模様をつくり、その上に何度も漆を塗り重ねて研ぎ出す――海の底のような景色が浮かび上がる技法です。
この研ぎ出しが、若狭塗ならではの美しさであり、同時に職人の根気と感性が問われる部分でもあります。
私は四代目として、伝統を守りながらも、今の暮らしに合う形の若狭塗りを模索しています。
かつては硯箱や重箱などが主流でしたが、今はお箸を中心に、ボールペンや名刺入れ、ピンバッジなど、日常の中で気軽に使えるものづくりに力を入れています。
「日常雑貨に若狭塗を使いたい」と感じてもらえる、きっかけになれば嬉しいです。
私は、他の職人があまりやらない小物にも、「やってみよう」と若狭塗をしてきました。
ホテルのパネルや大学の装飾など、新しい分野への挑戦も、若狭塗の可能性を広げる一歩だと思っています。
失敗を恐れず、工夫しながら、新しい若狭塗のかたちをつくっていく――それが今の自分の役目だと感じています。
軽くて手になじみ、熱が伝わりにくい若狭塗の器は、日常使いにもぴったりです。
これからも、「伝統の技」と「今の暮らし」をつなぐ漆器づくりを続けていきます。
どうぞ一度、若狭塗の深い輝きを手に取ってみてください。